NHKドラマ10「シバのおきて」の放送が始まり、第3話まで配信されました。福ちゃんはじめ、シバが画面に映るたびに、キュンキュンしっぱなしの45分間を過ごしています。私もドラマの放送前に、原作の魅力を記事にしてきましたが、実際にドラマを見てから原作を読むと、原作の魅力がより味わえると感じています。そこで今回は、原作の本当の魅力についてまとめてみました。
結 論

ドラマと原作は別物として楽しむなり~
ドラマ「シバのおきて」と原作『平成犬バカ編集部』は別物、と私は感じました。ドラマの方は、平日の夜に一息ついて、肩ひじ張らずに楽しめるエンタメであるのに対して、原作は犬と人との文化史を綴ったノンフィクションであるということです。
テレ朝の「Inspired by 池井戸潤 民王®」で「Inpired」、インスパイアされた、という言葉が使われましたが、今回の「シバのおきて」もそのような感覚を少し持つと、より的確な気がします。
原作を基にドラマを作る時には、もちろん色々アレンジされますが、ドラマ「シバのおきて」の魅力と、原作『平成犬バカ編集部』の魅力は、ちょっと異なる気がします。以下、原作の魅力のポイントをまとめたいと思います。
時代背景を基にした、犬と人との暮らし方

原作は、犬と人との暮らし方が大きく変化した平成時代に、柴犬、日本犬を専門にした雑誌『Shi-Ba』が誕生した実話です。
その昔、昭和の頃は、犬は外で飼うのが普通でした。それが次第に室内で飼われるようになっていく、犬の暮らしが劇的に変わった平成時代のお話です。
私もちょうど平成元年に引っ越したアパートは、大家さんが隣に住んでいましたが、大家さんの庭に、柴犬系の雑種が飼われていました。なので毎日、そのコと顔を会わせるのが楽しみでした。今では、散歩しているワンコを遠めに眺める事しかできないですよね。
そして平成の初めの頃は、インターネットもまだまだ駆け出しのころで、SNSもありませんでした。それが指数関数的に普及して、私たちが手にする情報量も爆発的に増えていきました。
そんな時代背景の中、犬と人の暮らし方においても、
・犬も人と同じように高齢化し、介護が必要になり、認知症にもなっていく、そんな犬たちとどのように暮らしていくか
・犬の飼育放棄、ペットビジネスの闇などの社会問題
・多頭飼いによって、本人(犬たち)はどのようなストレスを抱えているのか
・家の中で一緒に暮らすだけでなく、一緒に外出する、さらには一緒に旅行にも行くようになる
・東日本大震災を契機として、災害時の犬との避難、暮らし方が改善されていく
など、犬と人の暮らし、文化を描いているのが原作なのです。
ドラマの時代設定も平成ではありますが、3話まで見た限りでは、特に平成であることの意味合いは感じられませんでした。これからどのように描かれるかわかりませんが、時代背景を基にした犬と人の文化史は、原作を読まないと堪能しきれないと感じています。
雑誌制作のリアルが描かれている

犬と人が一緒に暮らすようになっていく中では、チワワやマルチーズなどの愛玩犬や、レトリーバーのような優しくおとなしそうな犬たちが人気を博します。一方柴犬は、昔ながらの “番犬” 的な風情があり、ちょっと近寄りがたい雰囲気も感じます。
そんな中で、柴犬、日本犬の専門誌『Shi-Ba』が作られていくわけですが、その出版社・辰巳出版は、釣りとかパチンコとか、男性向けの娯楽の雑誌が主。女性向き、家庭向きの犬の雑誌は、社内的にはアウェー。そして、社内で孤立状態、アウェーにあった編集長が、自分の愛犬(柴)を表紙にして、柴犬、日本犬の専門誌を作ろうと思いつく。フツー、あり得ない発想です。でもそれが実話。だからおもしろいのです。
編集部員もそれぞれの事情を抱えた人たちが集まってくる。大胆な発想を持ち、それを具体的に伝えるのが苦手な口ベタ編集長の下、編集部員それぞれが成長していく中で、『Shi-Ba』毎号の企画が立てられ、作り上げられていく。それを柴犬たちが見事に演じていく。その柴犬たちも高齢化したり、新しい仲間が入ってきたりのリアルストーリー。
ドラマでは、原作とは異なる設定の人間模様を楽しめますが、原作のリアルなドキュメンタリーは、やはり原作ならではの魅力と感じています。
例えば、ドラマの第1話で出てきた、柴犬の尻尾をテーマにした雑誌企画は、原作では、柴犬の肛門を集めた企画。テレビ、ましてやNHKでは、肛門特集はさすがに無理でした。
また、ドラマ第3話で石森玲花(飯豊まりえさん)担当の4ページ分を、編集長が柴犬川柳を考え付いて肩代わりする場面がありました。原作では4ページ分まるまる空いてしまっていることが雑誌校了の直前になって発覚するところで、編集長の苦肉の策として生まれた柴犬川柳でした。ドラマの設定も面白かったですが、原作のリアルな焦燥感も捨てがたいところです。
片野ゆかさんの筆致のおもしろさ

その頻度(エンタメのミカタ注:犬が頻繁にコミュニケーションやスキンシップを求める頻度のこと)が高いほど犬たちは嬉しそうで、なにしろ犬は、犬の姿をしているというだけでカワイイのだから、飼い主たちがその様子にみるみる心奪われていくのは当然の成り行きだった。
これは、原作『平成犬バカ編集部』の「はじめに」にある一節です。「なにしろ犬は、犬の姿をしているというだけでカワイイのだから」・・犬の魅力、かわいさをズバリ!表現してくれました。ワンコ大好きの私たちが言葉に表せなかったもどかしさを、見事に解放してくれたとの想いです。
著者・片野ゆかさんの表現は、事実を的確に、サラッと冷静に、でもユーモアがあふれていて、もちろん「はじめに」だけではなく、『平成犬バカ編集部』全編にわたって堪能することができます。この文章力は、ドラマではなかなか表現しきれないと思います。だって、ドラマでセリフを言うのは、作者ではなく演者ですから(;^_^A ナレーターがいれば、冷静かつユーモアのある一言を言ってくれるかもですけどね。
まとめ
ドラマ「シバのおきて」と原作『平成犬バカ編集部』は別物として楽しむことをお話してきました。ドラマは肩ひじ張らずに楽しめるエンターテイメント、原作は犬と人の文化史を雑誌制作を通して描いたノンフィクション、でありながらユーモアある筆致。ドラマは養殖魚、原作は天然魚(←この例えは、「じゃあ、あんたが作ってみろよ」の第2話を見るとわかるよ(*^^*))
でも別物とは言っても、原作を知っているとドラマを見た時に、「この場面、あのエピソードだな」とか、「あのエピソードをこんな風にアレンジしたんだな」とわかり、より楽しめます。ドラマはこれから中盤に入ってきます。福ちゃんはじめ柴ちゃんたちにキュンキュンしながら、楽しみたいと思います。
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