NHKドラマ10「シバのおきて~われら犬バカ編集部~」の原作、片野ゆか『平成犬バカ編集部』は、日本犬専門誌「Shi-Ba(シーバ)」誕生の舞台裏を描くノンフィクション。編集長と仲間たちの奮闘を通して、人と犬がつなぐ力の大きさが見えてきます。
編集長の孤立と「Shi-Ba(シーバ)」誕生の物語

孤立した編集長と柴犬だけの居場所
物語の中心にいるのは、編集部で孤立し、居場所を失っていた編集長です。
周囲の人間関係はギクシャクし、彼のもとに残ったのは唯一の柴犬だけ。
しかし、その柴犬がきっかけとなって新たな企画が芽生えます。
個性豊かな仲間たちの登場
そこに集まってきたのは、他の職場では居場所を得られなかった人々や、少し変わり者と思われる人たち。
互いにバックグラウンドも価値観も違いますが、「犬」という共通項のもとで一つになり、やがて日本犬専門誌「Shi-Ba(シーバ)」を立ち上げていくのです。
雑誌づくりに映る “再生の物語”
編集長と新しい仲間たちが試行錯誤しながら雑誌を形にしていく過程は、ただの出版裏話にとどまりません。
孤立していた人間が再び社会とつながり、仲間とともに何かを成し遂げていく“再生の物語”でもあるのです。
犬を通じて描かれる人間社会

犬が生む不思議な吸引力
柴犬を中心にした雑誌づくりに人が引き寄せられていく様子は、犬という存在が持つ不思議な吸引力を示しています。
犬はただのペットではなく、人間関係をつなぎ直す媒介となる――私はこの点に大きな感銘を受けました。
社会の縮図としての編集部
「Shi-Ba(シーバ)」創刊をめぐる出来事は、社会の縮図のようにも映ります。
排除されがちな人、居場所を失った人たちが、犬を中心に再び集まり、そこから新しい価値を生み出していく。
これは小さな編集部の話でありながら、現代社会に通じる大きなテーマを孕んでいます。
著者・片野ゆかのまなざし

動物を通して人間を描く
片野さんはこれまでにも数多くの動物を題材にしたノンフィクションを書いてきました。
その特徴は、動物の生態や愛らしさを描くだけでなく、人間社会や人間関係を浮かび上がらせることにあります。
他の著作との共通点
たとえば『ゼロ!熊本市動物愛護センター10年の闘い』では、動物保護の取り組みを通じて地域社会や行政の問題が描かれています。
『平成犬バカ編集部』でも同様に、犬を切り口にして“人と人との再生”というテーマが描かれているのです。
犬文学としての魅力

犬が人を救い、人をつなぐ
『平成犬バカ編集部』を読んで強く感じるのは、犬が人を救い、人をつなぐ存在だということです。
柴犬はただ誌面を飾る題材ではなく、編集長や仲間たちの人生そのものを変えていきます。
読者の心を映す物語
この物語を読むと、自然に「自分にとって犬とは何か?」と問いかけられるような気持ちになります。
犬を飼っている人なら共感を覚えるでしょうし、飼っていない人にとっても「人と人の関わり方」を考えるきっかけになるはずです。
まとめ

片野ゆか『平成犬バカ編集部』は、犬専門誌「Shi-Ba(シーバ)」誕生の裏側を描きながら、同時に人間の再生とつながりを描いた物語です。
孤立していた編集長と、個性豊かな仲間たち。
その真ん中に柴犬という存在があったからこそ、雑誌は生まれ、物語は動き出しました。
犬が持つ力は、人を救い、人を結びつける。
この原作を読むと、その普遍的なメッセージが胸に響いてきます。
そして、これから始まるNHKドラマ10「シバのおきて~われら犬バカ編集部~」がどのように表現するのかを楽しみにできるはずです。
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